メッシュWi-Fiをご存知ですか?
インターネットに繋がることが普通となった昨今、ネットワークの分野で新たに「メッシュWi-Fi」と呼ばれるものが登場しました。
そもそもWi-Fi(ワイファイ)という言葉はご存知でしょうか?
Wi-Fiとは
国際標準規格 IEEE 802.11を採用した無線LAN機器同士の相互接続性などの認証を受けたことを表す商標です。
Wi-Fi認証を受けた機器同士であれば、メーカーが異なっても接続できます。
スマホやパソコンなどで利用が広まったため、「無線LAN = Wi-Fi」と言えるほどとなり、今ではWi-Fiが無くてはならない存在となりました。


画像:iPhoneのWi-Fi設定画面(引用=Apple サポート)と、Windows 10のWi-Fi選択画面
それでは、メッシュWi-Fiとはどのようなものなのでしょうか。
メッシュWi-Fiの主な特徴
- 複数のルーターを使って、広い範囲へWi-Fi電波を届けられます。
- 範囲内で移動しても再接続が不要で、安定して接続が維持されます。
- 最適な接続ルートが選ばれ、1台の接続機器にトラブルがあっても接続されます。
メッシュWi-Fiを一言でいえば「従来までのWi-Fiの弱点を克服する技術を使った新しいWi-Fi」です。
メッシュWi-Fiと、従来型や中継器との違いは?
メッシュWi-Fiと従来のWi-Fiとは何が違い、何が良いのでしょう。
従来までのルーターや中継器には、どのような弱点があったでしょうか?
実はこんな問題がありました。
◆Wi-Fiは接続端末が増えると通信速度が低下してしまう。
では、なぜ通信速度が低下してしまうか?
Wi-Fi電波は、ご家庭のインターネット回線の終端装置に接続された無線LANルーターから発射されています。Wi-Fiを利用しているスマホなどは、全てこの無線LANルーターに接続されているのです。
最近はパソコンやスマートフォン・タブレットだけではなく、ゲーム機やスマートスピーカーを含む家電製品など、ありとあらゆるものが繋がるようになりました。
したがって、無線LANルーターは数多く繋がっている機器の通信処理をたった1台でこなしているということになります。
接続している機器が2~3台と少ない台数であれば、余裕をもって処理できます。
しかし5台、10台と台数が増えていき、ルーター自身のキャパシティを超えてしまうと対応しきれなくなってしまいます。
結果、帯域が不足し“通信速度が落ちてしまう”という症状が出てきます。
(帯域とは:無線LANルーターと端末の間でデータが行き来をする、道路の車線幅のようなものです)
つまり、“多くの台数を接続して通信をすると帯域不足が起きてしまい通信速度の低下を引き起こす”ことが、従来のWi-Fiの弱点だったのです。
ではどうすれば解決できるのでしょうか。
・無線接続を諦め有線接続ができるように差込口を増やす?
・各部屋・階ごとにインターネット回線を引く?
これらの方法は自分で作業するにはハードルが高く、大きな負担となってしまうことからあまり現実的ではありませんでした。
しかし、メッシュWi-Fiの登場によりこういった状況を打破できるようになりました。
まずはメッシュWi-Fiの仕組みから紐解いていきましょう。
◆従来までの「ルーター1台だけ」ではなくサテライトルーターを複数台設置する。
メッシュWi-Fiは2種類の機械で構成されています。
- 親機として動作する「メインルーター」(写真左)
- 中継器として動作する「サテライトルーター」(写真右)


引用:Wi-Fiルーター : AirStation connect | バッファロー
サテライトルーターは複数台設置できます。
従来型のルーターは1台だったのに対し、メッシュWi-Fiはメインルーターとサテライトルーターの2台以上を使用して運用するという方法です。
1つ例を挙げましょう。
引用:まるわかり!メッシュWi-Fiのメリット | AirStation connect シリーズ | バッファロー
2階建ての戸建てをイメージしてください。
親機となるメインルーターは1階のモデム(終端装置)に接続します。
ここまでは従来までの無線LANルーターと同じです。
メッシュWi-Fiではさらに、2階の各部屋にサテライトルーターを1台ずつ設置します。
この3台が互いに連携して大きなWi-Fiを構築します。
“複数のルーターから発射される電波が重なることで網目状となり家全体に張り巡らせることができる”
これが「メッシュWi-Fi」の大きな仕組みとなるわけですね。
また、上記の画像では「中継器」と記載されているサテライトルーターですが、
これがメッシュWi-Fiならではの強い力を発揮します。
実は従来型のルーターを使っている場合でも「中継器」が存在しました。
ですが“メッシュWi-Fiの中継器(サテライトルーター)”と“従来型のルーターで使用する中継器”は全く違います。
従来型はあくまで“弱くなってしまった電波を強くし再度発射すること”が大きな仕事です。
よって、通信経路処理などの仕事は親機である無線LANルーターに全て丸投げするのが実状でした。
しかし、メッシュWi-Fiのサテライトルーターは違います。
SSIDと呼ばれる電波の名前から、接続パスワードを含む設定が自動でコピーされ、影分身の如くメインルーターと同等の働き(通信経路処理)をしてくれます。
こうすることで、1台だけに負担がかかってしまう状況を避け、先にご説明した“キャパシティを超えてしまい帯域不足になってしまう状態“を防ぐことができます。
「Wi-Fiにあった弱点を見事克服した」ということですね。
また、同等の機能を持つことで、メインルーター(親機)の近くにいるのと同じような効果が家中どこにいても得られるようになり、電波が途切れることなく安定した通信ができるようになります。
Wi-Fiエリアも広くなるため、電波が届かなかった部屋でも通信が可能となり、快適なインターネットができるようになるでしょう
他にもメッシュWi-Fiにはメリットがあります。
新たな力まで生み出すメッシュWi-Fiではどんなことができるのでしょう。
メッシュWi-Fiのメリット/デメリット
メッシュWi-Fiのメリット
◆最適な経路を自動で判断し接続してくれる。
メッシュWi-Fiを利用することで、帯域不足とならないよう混雑していない経路を自動で選び接続してくれます。
各ルーターが通信経路を処理できるため、無理に親機に接続する必要がありません。
そのため、
- 接続先のルーターに負荷がかかっている
- 通信速度が落ちている
- 電波の強度が悪い
と分かれば自動で接続先のルーターを変えてくれます。
よって特定の箇所だけ混雑するという状態を回避し、最適な経路でインターネットに接続できるのです。
例えば物理的な距離だけで見ると、親機に繋いだ方が近い場合があるとします。
しかし、親機に繋ぐよりも、少し離れた場所にあるサテライトルーターに接続した方が良いと判断されると、サテライトルーターへ接続されます。
他にも自動で切り替わることで得られるメリットがあります。
それは“家の中で移動した場合”です。
従来までの中継器では電波強度が弱くなり通信品質が悪くなった場合でも、手動で接続先を切り替える必要がありました。
そのため、いちいち端末側のWi-FiをON/OFFにするなどワンクッション操作をする手間が発生してしまいます。
しかし、メッシュWi-Fiでは自動で切り替わること、またSSIDなどの情報がコピーされメインルーターとサテライトルーターの状態が同じであることから、一切の操作が不要で途切れることなくスムーズに切り替えがされるようになります。
2階の部屋で再生していた動画がリビングに移動する途中に止まってしまうということがなくなるということです。
◆電波の届きが悪い場所には、追加でサテライトルーターを設置するだけで完了する。
メッシュWi-Fiを構成するメインルーターとサテライトルーターは“スターターキット”という形でセット販売もされています。
よくあるのはメインルーター1台とサテライトルーター1~2台のセットです。
しかし、家というのは多種多様で、平屋か複数階か、鉄骨か木造か。
家自体の作りが全然違うのは当たり前のことです。
3階建てや4LDK以上などの広い家では2台だと電波の弱い部屋があるかもしれません。
そんな場合は、別途追加でサテライトルーターを購入し設置するだけで完了です。
難しいセットアップも必要ありません。
各メーカーが提供するアプリを使えば指示通りに進めるだけで、既に構成されているメッシュWi-Fiに自動で参加し、メッシュWi-Fiのエリアを広げることができるのです。
もちろん追加したサテライトルーターも親機と同様の働きをするため、負荷の分散も可能です。
メーカーや機種によってさまざまですが、多い物では最大9台までサテライトルーターを設置できる物もあり、親機を含めると合計10台ものルーターが使えるため、どんな広い家でも十分まかなえるでしょう。
メッシュWi-Fiのデメリット
ここまでのご説明だけだともはやメッシュWi-Fiに弱点などないように感じます。
しかし、残念ながらデメリットもあります。
◆ルーターに細かな設定ができない場合もある
例えば、帯域幅やVPNなどの設定です。
従来型のルーターでは細かな設定ができました。
しかし、メッシュWi-Fiではこういった細かな設定ができない物もあります。
インターネットに繋がり、検索やメール、動画閲覧などの基本的なことしかしない場合は問題になりませんが、サーバーの設置やポートの設定などをしないといけない場合は避けた方が良いでしょう。
◆複数のルーターを設置することで力が分散されてしまう
メッシュWi-Fiはどこにいても途切れることがない“安定”を求めて作られました。
その為、最大通信速度など性能を追い求める方には向かないでしょう。
従来型の1台のみしかないルーターの場合は、そこに全ての力を注ぐことができます。
しかし、メッシュWi-Fiのような複数のルーターを用いた場合、相互に通信し連携することで1つの大きなWi-Fiを構築しているため、1台のルーターのみの時と比べると力は分散されてしまい、通信速度が落ちてしまいます。
◆汎用性が低く、ルーターの台数分だけ購入時に費用がかかってしまう
安価な無線LANルーター1台であれば数千円からあるものの、メッシュWi-Fiの場合は無線LANルーターを複数台購入する必要があるため、導入時にコストがかかってしまいます。
また、新たにサテライトルーターのみを購入し既に構築されているメッシュWi-Fiに追加する場合は、既に導入してあるルーターと同じメーカー・同じ機種でそろえる必要があります。
よって、年数が経ち新たに新機種などが出てくると、ところてん方式に市場から姿を消していきますので、入手が難しくなることも考えられます。
どうしても入手が難しい場合はメインルーターを含め、全てを入れ替える必要が出てきます。
メッシュWi-Fiをおすすめする人・しない人
ここまでメッシュWi-Fiとは何か、メリットとデメリットについてご紹介してきました。
人によって捉え方は様々ですので、検討する価値あり!と思われた方や、導入を見送ろうと思っている方もおられると思います。
参考までにここからは「こんな場合はおススメしますが、
こんな場合はおススメしません」という指標をご紹介いたします。
メッシュWi-Fiをおすすめする人
◆3階建てや4LDK以上など広い家に住んでいる
どの部屋にいても親機の近くにいるような効果が得られ、移動してもスムーズに途切れることなく切り替わっていくのはまさにストレスフリーでしょう。
これは、戸建てに限らず部屋数が多い広いマンションでも同じことが言えます。
届かない場所はもちろん、これまではWi-Fiを不要としていた場所でも使うようになった際には、追加で設置するだけという手軽さも大きいでしょう。
◆複数台の機器を接続することが多い
メッシュWi-Fiの強みとも言える“安定した複数台通信が可能“という効果に魅力を感じる場合は導入を考えてみても良いでしょう。
ルーターによって最大接続台数は違いますが、現時点で10台以上の機器を接続している場合はメッシュWi-Fiにすることで負荷の分散ができ、通信が安定する可能性があります。
メッシュWi-Fiをおすすめしない人
◆一人暮らし・ワンルームなど従来の無線LANルーターで十分カバーできている
接続台数が少なく、ワンルームなどの場合はメッシュWi-Fiにしても得られる効果は少ないでしょう。
むしろ導入時のコストがかかってしまうことや、力が分散されてしまうことから通信速度が落ちるなどのデメリットが強くなってしまいます。
現時点で特に不満がない場合は、従来の無線LANルーターを使用した方が良いでしょう。
◆有線ポートが複数必要な場合
これは、機種によって違いがあるため一概に言えない部分もありますが、メッシュWi-Fiのルーターは有線LANポートが少ないことがあります。
テレビでインターネットを通じた高画質な4K動画を安定して見たい場合や、Wi-Fiではなく有線で高速な通信がしたい場合などはその分のLANポートが必要になります。
「購入したらポート数が足りなくて困ってしまった」ということも考えられるので、有線で使用する機器が多い方には不向きかもしれません。
メッシュWi-Fiを選ぶ際に気を付けること
新しい技術・機械を購入する時だからこそ知らないことも多いのは当然ですが、よく理解せずに「とりあえずお試しで購入してみよう」というのは危険です。
そこで、「選ぶ際はこんなことに気を付けると良いですよ」というポイントをご紹介します。
- サテライトルーターを最大何台まで追加・設置できるか
先にもお伝えした通り、メーカーや機種によって様々ですが、追加できるサテライトルーターの数には上限があります。
上限台数が少ない物を購入してしまうと、後々追加をしようとしても上限に達してしまい追加できないということが考えられます。
今現在必要な台数だけでなく、少し先の未来を見据え「最大何台は必要かもしれない」と予想を立てた上で選ばれることをおススメします。 - 有線LANポートの数が足りているか
ご自宅で使っている全ての機器がWi-Fiに対応しているとは限りません。
少ないポート数しかない為、有線で接続できる台数には限りがあります。
予め何台の機器を有線で繋ぐのか確認してからお店へ行きましょう。 - 想定される台数と導入コスト
「ルーターの台数はこれくらいで大丈夫かな…」と購入し、万が一足りない場合は追加で買い足す必要があります。
最初は2台で足りると考えていても、実際には4台必要だったなど「予想以上のコストがかかった」という結果を生んでしまいます。
不安であれば、家全体の簡単な見取り図と共に販売店のスタッフの方とよく相談してから購入するとよいでしょう。
パソコンドック24でもお力になれますので是非ご相談ください。
複数台設置をする際、どのように置くべきなのか
では実際に導入すると決めた場合、どんな形で設置するのでしょうか。
これまでは無線LANルーター1台のみを購入・設置をすることが普通だった為、突然複数台の設置を言われても想像しにくいかもしれません。
親機となるメインルーターはこれまで通りモデム(終端装置)に接続することに変わりはなく、コンセントに繋ぎモデムとLANケーブルで接続します。
サテライトルーターは“コンセントが挿せる場所である“ということが必須条件となります。
逆に言えば壁にLANポートなければいけないなどの条件はありませんので、ある程度自由に配置を決められます。
ですが何も気にせずに設置してしまうと電波強度の関係から正しくルーター間の連携が取れなくなってしまい、メッシュWi-Fi本来の効果を受けられなくなる可能性があります。
どこに設置するかを決める際には各メーカーが提供するアプリを使って決めましょう。
例えばバッファローが提供する「専用アプリ connect」を使用すると、
設置しようとしている場所が最適かどうかを教えてくれます。
どんなアプリなのか気になる方は下記のリンクをチェックしてみてください。
専用アプリ紹介 | AirStation connect シリーズ | バッファロー
画像引用元:専用アプリ紹介 | AirStation connect シリーズ | バッファロー
このようなアプリを使うことで、ネットワークに詳しくない初心者の方でも簡単にメッシュWi-Fiを構築できます。
また、追加でサテライトルーターを購入した場合でもアプリで同様に設置設定ができます。
推奨されるパターンとして、Wi-Fiを使用する各部屋、廊下や1階から2階に繋がる階段などに設置することが良いでしょう。
複数階建てで床暖房を導入している家では注意が必要です。
床暖房システムはWi-Fi電波の妨げとなるため、階段付近にサテライトルーターを設置するとよいでしょう。
参考:壁越しに(部屋や天井を挟んで)無線通信することはできますか。/障害物があっても電波は届きますか(Wi-Fiルーター全般) | バッファロー
先述のメーカー提供アプリなどを使って診断をしてみましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
1台のルーターで利用するだけでなく、複数台のルーターを使用して接続可能エリアを広げ、快適に接続できるメッシュWi-Fiについて興味を持っていただけたでしょうか。
普段よく使っているWi-Fiも規格の進歩や新しい技術で進歩しています。
「こんな方法もあるのか」と知っておいていただき、必要な時に思い出し活用いただけますと大変うれしく思います。