ファクトリーコンピュータという製品ジャンルをご存知ですか?振動やホコリが多い過酷な環境でも安定動作する、極めて高い耐久性を持つパソコンです。頑丈さだけで言えばレッツノートのような製品もありますが、ファクトリーコンピュータは業務用途に特化したアプリを24時間ノンストップで安定動作させ続ける必要があり、市販のパソコンでは代わりが利かない、重要な役割を担っています。
ファクトリーコンピュータとして代表的なものはNECのFC-98シリーズ。新しい機種ではWindowsが動作しますが、DOSしか動作しない古い機種でも、耐用年数を過ぎても現役で稼働している現場が多いです。町工場の強い味方として、主に工作機械管理やライン管理用途として活躍しています。
いざという時、サポート期限を過ぎているとメーカーに修理を依頼できません。頑丈なおかげで、システムの寿命よりも先に納入元の業者さんとの連絡がつかなくなっていることも多いです。古い機種はパーツの入手が難しく、自力で修理することもできません。いくら頑丈でもいつかは壊れるもので、パソコンドック24ではファクトリーコンピュータの修理依頼も多数ございます。
今回お預かりしたのはNECのFC-9801V2。電源は入るが、起動シーケンスに進みません。ブラックアウトしたままです。これが動作しないと工場の経営に関わるため、なんとか修理する必要があります。
この場合、マザーボード・CPU・電源モジュールいずれも怪しいので、順番にチェックを進めます。
チェック完了!
マザーボードとCPUには異常はありません。
電源モジュールが原因と考えられます。この機種の電源は変わった構造になっており、分割構成になっています。分解してみます。
電源モジュールを取り外して分解すると、内部に焼損箇所を発見。実装パーツのみでなくパターンも破損していました。ただ、普通の焼け方とは少し様子が違います。
パーツの経年劣化により、年月をかけて損傷が進んだのでしょう。こんなになるまで、よく働いたものだと思います。
パターンの再生修復を行ないます。この基板は多層基板になっておらずシンプルなので扱いやすいですが、根気を要する細かい作業になります。基板工作が得意な人なら慣れた作業ですが、最近は趣味で基板工作をする人は少なくなりましたし、パソコン修理業者でもこの種の修理技術は持っていないことが多いと思います。
さーて、パターンの修復は完了!ちょっとした達成感を感じつつ、次の作業に進みます。
次は、破損したパーツの交換。さらに、劣化が進んでいるパーツが他にもあるため、故障の予防のためそれらを交換します。
さあ、これで直ったはず。どうでしょう?
テストを実施してみましょう。
スイッチオン・・・
ピポッ!
起動しました!
PC-98アーキテクチャのDOS画面で04-06-09みたいなタイムスタンプってのも、ちょっと珍しく感じますね。ネットにつないでないので脆弱性の心配もないし、まだまだ使えますよ。
第一段階テストはOK。連続負荷テストも問題なし!
修理完了です!
ファクトリーコンピューターは専用のカスタム基板、プログラム等を使用していることが多く、違う機種に置き換えるとシステムが動作しなくなる事があり、同一機種で運用する必要があります。そのため原則として、パーツ交換ではなくパーツ補修として対応します。汎用のパーツで組み立てられている市販のパソコンとは考え方が全く異なります。
修理不能な場合は中古の同型機をお探ししますが、高額になるため、できるだけ部分補修で対応します。
できれば、定期診断をお受けすることをおすすめします。寿命が近づいているパーツを見つけて、壊れる前に補修します。場合によっては新しい機種へのリプレースを提案することもできます。
工業用コンピューターの保守でお困りならパソコンドック24にご相談下さい!
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