NEC製ノートPC-9821 Ls150に水がかかり動かなくなってしまったそうです。
この機種は今から15年前にリリースされました。もちろんメーカーの修理サポートは終了しています。
PC-98 / FC-98 修理サービス
PC-98シリーズってご存知でしょうか?NEC社独自のハードウェア規格でありながら、Windowsが動作します。当時は特に業務用途などでMS-DOSのソフトウェアが現場で多数安定動作しており、DOSといえばNEC版のMS-DOSだったので、とりあえずNECのパソコンを選んでおけば安心という人も多かったです。しかし実際には、Windows95以降2~3年ほどでシェアを落としました。
今回の案件ですが、オーナー様はほとんど諦めておられました。独自規格の古いパソコンなので、修理できる業者は少なくなっています。代替パーツも入手しにくくなっています。
水がかかった時にすぐに拭いたとのことで、外観では特に問題箇所があるように見えませんね。でも残念ながら起動しません。
PC-98はPC-98でしか動作しないソフトウェアを使っていることが多く、代わりのパソコンを購入してデータを移して解決、というわけにいきません。代わりがきかない機種なので、なんとかして修理する必要があります。
PC内に水が侵入した場合、外側からは判断できません。とにかく分解します。
バラバラに分解しました。ここから検証開始。まずはメインボードを見てみます。
上面には特に問題個所は見当たりませんので裏面を見てみましょう。
!
かなりヒドい状況です、何箇所かチップがショートしていますし、腐食している部分もあります。このメインボードはいろいろなところがやられています。
ショートしている箇所。
PC-98ファンにはおなじみ、Cirrus Logic社のVGAチップ(CL-PD-6722)。チップ端子間でショートし、チップ内部が燃えて、表面に穴が空いてしまっています。
腐食しています。
ここも。
ここもですね。
ボトムパーツにも浸水の痕がはっきり残っています。
各部を補修していてはキリがありません。というわけで、メインボードの交換は決定しました。
他の部分もチェックしていきます。
タッチパッドも駄目ですね、端子が腐食してマウスボタンの右が反応しません。
キーボードも見た目はきれいですが、浸水してしまっていてアウト。
ドッキングステーションも端子部に腐食がみられます、これは相当に多量の水がかかった様子です。詳しいことはお聞きしませんでしたが、何が起きたのでしょうね?お茶をこぼした程度ではなさそうです。
ここまでひどいと修理方針で悩む事はありません、損傷パーツすべて交換です。
併せて、耐用年数をオーバーしているHDDも新品に交換し元のデータを丸ごと移行します。
このPC-9821Lsは4.3GB以上のHDDは認識できないモデルなので、昨今のHDDをそのまま使うことはできません。ツールを用いて100GB-HDDの容量を4GBに修正し、PC-9821Lsで認識できるようにします。最近のパソコンの感覚だと残り96GBがもったいないですが、この機種では4GBでも多過ぎるくらいなので問題ないでしょう。
これで完了。「ピポ」音が鳴り、無事電源が入りました。写真では分かりにくいですが、PC-98おなじみのメモリカウントが動作しています。
Windowsも問題なく起動します。満身創痍な状態でも直せるものですね。
HDDは高速・静粛に動作する新品に代わり、Windows98も快適動作しています。体感ではっきり分かるくらい、動作が軽くなっています。
ノートPCに浸水した場合(量や季節にもよりますが)、内部に入った水分が1日で蒸発することはまずありません。二週間以上経っていても蒸発していなかったケースもあります。二週間も浸水状態が続くと腐食が進みます。
また多くの場合、水分が完全に蒸発する前に電源を入れてしまう事で致命傷になっています。
水濡れ後完全に乾くまで通電させなければ基板ショート等の損傷を回避できる可能性は高くなりますが、乾燥するのに日数がかかると浸水部分が腐食します。もし水濡れしてしまったら、すぐ電源を切り、ACアダプタ、バッテリーを外し、急いで完全分解を行い内部の水分を拭き取り、乾燥させる必要があります。今回の件も、早めにご相談いただければ軽症で済んだ可能性があります。
内部の水分を拭き取るには分解する必要があり、普通の人には難しいと思います。難しいと思われる方は、急いでお持ち込み下さい。
PC-98 / FC-98 修理サービス
PC修理 水こぼし・水没(修理に関する参考費用はこちら)
更新:
公開: