今回は珍しいご依頼です。パソコン修理ではありません。BOSS デジタルレコーディングスタジオ BR-1180の修理と作曲データの復旧をご依頼いただきました。この種の製品が故障した場合、普通は楽器店に持ち込むものと思いますが、実際には楽器というよりは、高度なデジタル機器のため、楽器店では修理できません。メーカーに修理に出すしかないのですが、ふだん楽器とは縁がない当店にご相談いただけました。
マルチトラックレコーディング機能だけでなく、プリセットのエフェクトやリズムトラックなどが充実していて、音楽が好きな人ならこれひとつあればたっぷり楽しめます。電源オンですぐに使えるので、インスピレーションを生かした創作をしやすいと思います。
扱ったことがない機器ですが、壊れたハードディスクをなんとかできればいいんですよね? とりあえず分解してみないと詳細は分かりませんが、きっと修理できます。お任せください。
データ復旧
BR-1180は2.5インチのハードディスクが内蔵されており、演奏などを録音・編集加工できるようになっているのですが、ハードディスクはいつか必ず壊れる運命にあるわけで・・・・つまり、PCと同様にハードディスククラッシュなど、データを失うようなトラブルが発生するわけです。
http://www.roland.co.jp/recorder/
ハードディスクは壊れやすいせいか、最近ではSDカードをストレージとして用いる製品が人気のようです。SDカードは軽いし、差し替えるだけで交換できるし、動画ほどの容量を食わない音楽データを扱うにはちょうどいいですね。パソコンに差し込めばそのままバックアップをとったりできるでしょうし。
今回はハードディスクの損傷は間違いないですが、操作の問題で保存データを全て消去してしまったらしく、できればこれも復旧してほしいとのことです。
このBR-1180のデータ復旧と、再び使用できるようように修理します。
本体を分解します。
筐体のサイズの割に中味はガラガラ、余裕ありすぎですね。ふだんは中身ぎっしりの高密度ノートパソコンを扱っているので、これだけ空いてたら作業は簡単です。
ハードディスクはノート用の2.5インチサイズのものが搭載されています、容量は20GBです。今どきのハードディスクとしては容量が少ないですが、調べてみたところ、どうも容量制限があるみたいです。容量をアップしてあげたいところですが、とりあえず無難に修理方針を立てます。
HDDは変換アダプタを使って取り付けられていますから、2.5インチではなく3.5インチハードディスクを使うこともできそうです。気軽に練習スタジオなどに持ち込むには重くなってしまうので、2.5インチでよいと思います。
CD-Rドライブはデータのバックアップ⇔復元用途に使用します、こちらもノートPC用のドライブが流用されています。パソコン用のパーツが随所に使われているので、これならパソコン修理専門店の当社でもなんとかできそうです。おそらくファイルシステムなども、メーカー独自のものをわざわざ作ってたりしないでしょう。
ハードディスクを取り外して状態をチェックしてみると、不良セクタが発生していました。そのためデータを読み取ることができなくなってますが、データ自体は存在してるはずなので、パソコンのハードディスクを補修する感覚で復旧できると思います。
ツールを使ってデータの存在を試みたところ、データを確認できました。消してしまったはずの大事な作曲データが、たしかに存在します。これをなんとか復旧させます。
ただ、かなり欠損しており、必須ファイルも消えたり損傷したりしているものが多々あるようです。全部を完全に復旧するのは難しいかもしれません。
物理的に破損しているハードディスクをBR-1180本体に戻すことはできません。新品のハードディスクに交換する前提で、BR-1180側のセッティングを行います。
ハードディスクを新品に交換し、BR-1180でフォーマットするとHDD内にオペレーションシステムが生成されます。
ハードディスクをイニシャライズ。
ハードディスクに損傷がなけれけば元のデータ構造を移行するだけですが、今回は工夫が必要。復旧した曲数と同数のダミー曲を保存します、ダミー曲は元からついているサンプル曲を使用します。
何曲あるのかというと、100曲以上・・・ちょっと手間がかかります。パソコンとは違うので、小さな液晶画面を見ながらプチプチやるしかありません。
ダミー曲を保存し終えました。ここからはパソコン修理店のノウハウを使って、回収した曲データをダミー曲と置き換えます。ちょっと大胆な作戦ですが、うまくいけばこれが一番確実です。
回収データに欠損があるため、ファイル構成をチェックしながら1曲ずつ作業を進めてゆきます。
BR-1180は1曲のデータが複数のファイルの集合になっているため、複数の音源データファイルと、その組み合わせを指定する設定ファイルが揃っていなければ元通りの曲になりません。
最終的には作曲されたご本人様に確認いただく必要がありますが、その曲が正常に再生できるかどうかは復元できたファイル構成を見ればある程度分かりますので、復旧不可と判断できる曲を省いてゆきます。
ようやく最終段階になりましたので、ご本人様にチェックしていただきました。
結局、半分程度の曲は復旧できませんでしたが、お客様には満足いただけました。
今回のケースでは、障害時にデータの上書き操作を重ねたことで復旧率が低くなってしまいましたが、問題が起きたと分かった時点ですぐに電源を切って即座にご相談いただければ、復旧率はもっと高くなります。なんとか自力で復旧しようとして、あれこれ操作をしないほうがよいです。条件がよければ、ほぼ全曲救出できるかもしれません。
デジタルレコーディング機器のデータが読み出せなくなったり、ハードディスクを認識しなくなったりしてお困りでしたらパソコンドック24にご相談下さい。データストレージとして汎用のハードディスクやSDカードなどを用いるデジタル機器であれば、ファイルシステムもパソコンと共通であることが多いので、たいてい復旧できます。
データ復旧
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